外国人とタワマンから都市を考える
三浦 展
外国人はどこに住んでいるのか
東京都の住民基本台帳で外国人がわかりますがバブルのはじけた後ぐらいから主に23区内で２倍ぐらい外国人数が増えています。武蔵野市もちょっと増えていますね。
2015年の国勢調査で外国人数を「町丁別」に、つまり○区〇町〇丁目というレベルで調べますと、新宿、池袋、大久保に外国人が多いのですが、そこから北に向かって、川口のあたりまで外国人が多いことがわかります。
対してアメリカ人は大体都心部です。港区の大使館とかビジネスマンが多く、数もそんなに増えていません。
今、圧倒的に数が多いのは中国人で、足立区や葛飾区、江戸川区、川口など、北東部に多い。それ以外のアジア系、韓国、朝鮮、フィリピン、ベトナムも、足立区とか新宿が多いですね。
この中国人とかアジア人が住んでいる地域分布が、どこかで見たような分布だと思ったら、それは「木造密集地域」、特に「地震が来ると危ない地域」と似ているんです。
かつて比較的収入の低い日本人が住んでいた木造密集地帯の、かつ、地震で危ない地域に、アジア系の外国人がたくさん住むようになっているのです。
でも、そういう地域は、大体、私の好きな街に当たっています（笑）。
最近そういう木造密集地帯はどんどん再開発されてタワーマンションやオフィスビルが建っていますね。
武蔵野市の外国人を国籍別に2008年と直近を比較すると、ネパール、ベトナムの方が増えてます。このうち相当数がハモニカ横丁で働いているんじゃないかと思うんですけど、どうなんでしょう。
外国人が住む街と未婚女性が住む街は違う
一昨年、出した本で『都心集中の真実』という本があります。そこに載せたデータになりますが、女性の就業率が高い町を何町何丁目というレベルでプロットすると、中央区、墨田区、江東区、要するに、隅田川沿いの旧倉庫街がマンションに変わって、そこにいっぱい住んでるっていうことがわかりました。
それから未婚の女性が未婚の男性よりずっと多い街は東横線沿線。あとは小田急線、中央線もやや多く、明らかに西南部に軸があることが分かります。
つまり未婚女性の比率が高い地域と外国人がたくさん住む地域は全然別であるということです。これも一種の格差でしょうか。
タワマンに住むのはどんな人か
タワマンに住んでいる人はどんな人か、属性を分析するため、最近調査をしました。1都3県在住者で、「大都市や県庁所在地の都心部のタワーマンションに住んだことがある、あるいは住んでいる人」の年収と、「郊外の広い戸建てに住みたい」人や「地方に住みたい」人と比較すると、明らかに「タワーマンションに住みたい人」は、年収が高いことが分かります。さらに学歴も高く、安倍政権も好きな人が多かった。このように、木造密集地域の再開発をしてタワーマンションを建てるというのは、都市から貧乏を追い出す作業であるということが、これらのデータから大体見えてきましたね。
タワーマン対デトロイトマン
さて、きょうの私のメインテーマ『タワーマン対デトロイトマン』です。これはアニメ化してYouTubeにアップしてYouTubeで暮らす人間になりたいと今は思っております。ストーリーはまあ単純です。「あるとき、タワーマンがやってきて、木造密集地帯にレボリューション光線というのを発します。ばーっと燃えていくと、そこから、かわいい女性がキャーッと逃げだします。この人の名前はモクミツちゃん。タワマンがたくさん建ち、タワーマンションの森ができる。ガハハとタワーマンが喜んでいると、木密ちゃんの助けてという声を聞いたデトロイト君が、大変だと言って駆け付けます。タワーマンとの戦いが繰り広げられ、最後にデトロイトパンチを食らわします。タワーマンをやっつけた後、残された木密地帯に、スモール光線というものを浴びせ掛けますと、木密がシェアハウスになったり、シェアオフィスになったり、お店になったりしていきます」—―駄目ですかね、こういうの（笑）。(了)
三浦 展
社会デザイン研究者／カルチャースタディーズ研究所主宰。1958年生まれ。1982年一橋大学社会学部卒。（株）パルコ入社、マーケティング誌『アクロス』編集室勤務。1990年に三菱総合研究所入社。1999年に「カルチャースタディーズ研究所」を設立。消費社会、都市と郊外、階層などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。 著書は80万部のベストセラー『下流社会』のほか、主著に『第四の消費』『家族と幸福の戦後史』『ファスト風土化する日本』がある。その他、『吉祥寺スタイル』『高円寺 東京新女子街』『都心集中の真実』『首都圏大改造』など多数
